2015年9月23日水曜日

2万9千人のラグビーファンの観戦マナーに感動 in ブライトン。

 この先、おそらく長きに渡り語り継がれることになるであろう、日本代表がSpringboksこと南アフリカ代表から上げた歴史的大金星。

 アタシは、日本人のお友達とスタジアムでこの試合を観戦しましたが、一番強く印象に残ったのは、試合の内容そのものよりもこの試合を見守った2万9千人のファンの観戦マナーのことです。あの会場全体の一体感は、故意に作ろうと思って作れるものではないはずです。もちろんそれは、試合の内容が素晴らしかったからという大前提があってこそなのですが、目の肥えたラグビーファンのマナーの素晴らしさに改めて感動した一日でもありました。

 日本代表とSpringboks、どちらかのチームのジャージーに身を包んだファンの数を数えたら、緑色のジャージーの方が明らかに多かったです。それ以外にイングランドのジャージーを着ている観客も多く、実は「ワールドカップの試合が見たかったから」という理由でスタジアムに足を運んだ中立的な立場の地元のラグビーファンが一番多かったのではないかと思います。

 イングランドと南アフリカは共にティア1でワールドカップの優勝経験もあり、ほぼ毎年のようにテストマッチで対戦、お互いにライバルとして認め合う国同士。方や日本はティア2、これらの代表チームとテストマッチが組まれることは稀。ひねくれた見方かもしれませんが、試合の前半、日本代表のプレーに対して沸き起こる拍手や歓声は、日本代表のサポーターに加え「ライバルで南半球の南アフリカはキライだから、対戦相手の日本を応援する」とか「ラグビーで特にどちらかのチームのサポーターで無い場合は、弱いチームを応援するのがマナー」といった理由で日本を応援してくれている地元のファンによるものだとアタシは思っていました。

 しかし、試合の経過とともに、会場にいる観客一人ひとりが両チームのプレーに魅入られ、「ラグビー」というスポーツの醍醐味そのものに陶酔していくのが肌で感じられました。誰ひとりとして選手やレフリーに罵声を浴びせることもなく、また必要以上に対戦相手のミスを喜ぶような行為も皆無。そして誰かが音頭を取るわけでもないのに、何度も何度も繰り返し会場を包み込んだ「ジャパン」コールはまさに鳥肌モノ。

 アタシ達の後ろには、Springboksのジャージーを着た小学生くらいのお嬢さんとお父さんの親子が座っていたのですが、そのお父さん、試合中に何度も「日本代表の15番はいいねぇ。」とアタシ達に声をかけてくれました。ホテルに戻ってから自分で撮影した写真を見てみたら、日本代表のトライに両手をあげて歓喜の表情すら見せているSpringboksサポーターの姿も映っていました。

 試合終了後、興奮のあまりピッチに駆け下りてしまいガードマンのお世話になった不届き者が何人もいたのは残念でしたが、それはむしろ、それだけ試合が素晴らしかった証かと思います。敗戦のショックでモノを投げ入れたり、周囲に暴力的な態度をとるようなファンはいませんでした。それどころか「おめでとう」とか「日本代表は素晴らしかった」と声をかけてくれるSpringboksやイングランドのジャージーに身を包んだファンが後を断たなかったのは嬉しいサプライズでした。また、キックオフの前に目の前で写真を撮らせてもらったセキュリティ担当のおじいちゃんが、目を細めながら「いい試合だったねぇ。特にどちらを応援しようと思ってたわけじゃないんだけど、もうホントにドキドキしちゃったよー。」とにこやかに話しかけてくれたりもしました。

 特にジーンときたのは、アタシがラグビーに出会うきっかけをくれた南アフリカ人の元ラガーマンのお友達からのメッセージ。

「日本代表のプレーは本当に素晴らしかった。日本代表に心から敬意を払う、そして僕の母国南アフリカがこんな素晴らしいチームと対戦したことを誇りに思う。」

「(世界ランク3位の南アフリカを破った)日本代表は世界ランク2位も同然。Springboksの出来は悪くなかった、でも日本代表が素晴らしすぎた。そう自分に言い聞かせないと僕は眠れない。」

 負け惜しみじゃなく、本心で言ってくれた言葉だと思うのです。でも、アタシが彼の立場だったら、多分こんなこと言えないんじゃないかと…。

 そう、スポーツマンシップって、選手に限らずファンも同じように身につけていないといけないものなんですよね。試合中に野次を飛ばしたり、選手やレフリーに罵声を浴びせる心無いファンがいるのは万国共通。でも個人的には、そういうファンの振る舞いによって不快な思いをするのは、日本国内の試合の方が確率が高いように思います。

 また、ワールドカップを含め、海外のテストマッチではスタジアムが全席指定席となるのが一般的。「日本代表を応援したい人たちは、○○エリアの自由席に集合してください!」なんてことができるのは、おそらく日本だけの超ローカルルールだと思います。アタシが仲良くしているロンドンオフィスの同僚のイングランド人の奥様はオーストラリア人。トゥイッケナムで両国同士のテストマッチがあると、いつもそれぞれのジャージーを着て仲良くスタジアムに向かうそうです。対戦国同士のジャージーを着ているカップルやグループを見かけることは、海外では全く珍しいことではないんですよね。

 次回の自国開催のワールドカップまでに、アタシ達の観戦スタイルは世界標準に近づいていけるでしょうか? それとも観戦スタイルも「Japan Way」???

 
拍手する

6 件のコメント:

匿名 さんのコメント...

まーこさんへ

こんばんは。以前コメントさせて頂いた元ラガーマンです。今は試合会場でしょうか?ブログ復帰後もいつも楽しく拝読させて頂いています。このたびも素晴らしい記事読ませて頂きました。試合内容とは別に視点で会場の雰囲気やラグビーの応援の多面性など書かれていて、とても興味深くかついつも通り楽しく読ませてもらいました!!特に「ラグビー」というスポーツの醍醐味そのものに陶酔していく・・・という部分(その前の文も好きです。プレーに魅入られるというくだり。。)がとても素晴らしくその場にいるような気持ちにさえ思えて来ました。あのような素晴らしい試合ができる日本、そして全力で強豪国の意地を最後まで真摯に見せてくれた南アフリカ、スプリングボクスの誇り高き戦士たちに感謝・感謝です。。
さあ、日本ではあと1時間余りでテレビ中継が始まります。試合を難しくするには日本か、それとも強豪国の一角スコットランドか??3時間後には全ての結果が現れることでしょう。皆が喜ぶ結果になるようはるか遠い日本の地(それも兵庫の北部の田舎町から)から心からわれらジャパンを応援したいと思います。きっと素晴らしい試合となる予感がします!(^^)!
まーこさんもお疲れでませんように!また更新楽しみにしています。ではまた(*´▽`*)
最後に一つ、まーこさんのブログまた友達たちにも読ませたいので、紹介させて頂いてよろしいですか?

匿名 さんのコメント...

まーこさん、こんばんわ。
新西蘭&濠太剌利です。

ただ外国の真似をする必要は無いと思います。
日本のラグビーファンはJapan Wayで良いと思います。

却説、本日のスコットランド戦。
前戦からの疲労もあると思いますが、私は、敗因は、”慢心” と見ました。
特に、堀江のパスからインターセプトされ、トライにつながった、あのプレーが
その後の試合の流れ、五郎丸のPG失敗はじめ、決定的なミスの連続につながったと思います。
Japanは、初心に帰る必要があると思います!

まーこ。 さんのコメント...

匿名さん、コメントありがとうございました。

スタジアムの空気感、テレビでも伝わっていたでしょうか?

ブライトンのスタジアムはキャパシティが3万人なので、秩父宮よりは大きく、あの聖地トゥイッケナムに比べたら半分以下なのですが、素晴らしいスタジアムでした。座席は皮張りで座り心地はバッチリ、前の席とのスペースも充分、傾斜もしっかりあり、またピッチが秩父宮のように近くて本当に試合が見やすかったです。「イギリスらしくない」晴天も味方してくれました。

ご存知の通り、私は専門的なことは全くわからないのでそういう類のことは書けないのですが、一ファンとして自分の目で見たこと、感じたこと、思ったことをブログで綴っていければと思っています。

お友達へご紹介いただくのは全く問題ありません。
しばらく更新を休んでいたらアクセス数も激減してしまいましたので、是非よろしくお願いします(笑)

まーこ。 さんのコメント...

新西蘭&濠太剌利さん、お久しぶりですね。
お元気でしたか?

実は私、月曜から水曜まで一旦イギリスを離れ、ヨーロッパの某所に出張にでていました。なので、日本対スコットランドの試合はテレビ放送ですら見ることができなかったんです。ちょうど試合の時間帯は打ち合わせと移動でインターネットでのライブ更新情報も見れず、夜にロンドンに戻ったタイミングで結果を知りました。ハイライトも見ていないので、どんな感じだったのかもまだわからないのですが、点数だけをみると、一方的な展開になってしまったんでしょうか?

まだ予選の試合は2試合残っていますから、是非頑張ってもらいたいですね。

タカヒロ さんのコメント...

私も友達に紹介させて頂きます。

まーこ。 さんのコメント...

タカヒロさん、リコメが遅くなってごめんなさい。
ありがとうございます。よろしくお願いしまーす。